事務所からのご案内
調査研究あるいは旅行を通じて、世界や日本の伝統的建築や民家、いわゆるヴァナキュラーな建築に数多く触れ、観察を重ねてきました。そこに見られる自然/建築/人間の三者の複雑で魅力的な関わり、そしてそこに刻まれた時間の蓄積。それらに接した時の素朴な感動が、建築の設計・研究に携わることの原点にあります。
このようなフィールドにおける体験と実感を大切にしながら、流行に流されず・常識にとらわれず・独創性にこだわりすぎず、「人間にとって自然な建築・住まいとは何か」という普遍的な問題にとりくみたいと考えています。
想い・コンセプト
- 「かたち」はどこからやってくるのか
とりくむテーマは拡散をつづけていますが、共通する関心は「かたち」ができる仕組みとは? というもの。無から有は生まれない。と私は考えています。だとすれば、建築や都市の「かたち」はどこからやってくるのか?
もちろん、数え切れないほどの要因が複雑に絡みあっていますが、一つ一つ解きほぐす作業を積み重ねていきたいと思っています。もし「かたち」ができあがる仕組みを少しでも理解できれば、人間にとってほんとうにふさわしい「かたち」に近づけるのでは?
そんな想いを頭の片隅に置きながら、主に建築を、時々そうでないものも、あれこれ考えたり作っています。
アジアの都市や建築を研究するのも、京都を歩き回るのも、歴史的建築に興味をもつのも、職人と協働するのも、紋様を分析するのもみな同じ関心からです。 - 建築の「かたち」
建築には、大きく言って内から決まる、生活の「うつわ」としての性格と外から決まる、土地や環境・社会の「うつし」としての性格があります。
両者をバランスよく調和させ、シンプルな「かたち」に結びつけることが設計という仕事の基本だと考えています。
「うつわ」としては、住み手の個性を活かし、変化と奥行きのある生活を生むこと。
「うつし」としては、周囲に配慮し無理をせず、街や自然に溶け込むようであること。
そんな現代の「ヴァナキュラー建築」をつくりたいと、実践・研究の両面から模索しています。 - 「奥行き」がいい
いろいろな〈奥行き〉のある、建築や家をつくりたいと思っています。行き止まりがなく、次々と場面の展開する、めぐりめぐる〈空間の奥行き〉
普段使いの場所と特別な場所、日常と非日常、中心と周縁、ハレとケ… 狭い意味での「機能性」でわりきれない〈象徴的で心理的な奥行き〉
作り手の手の痕跡が残り、表情と陰翳と触感に富んだ モノの生い立ちが読み取れるような〈奥行きのある素材/仕上げ〉
時間の蓄積・歴史の痕跡を残しつつ、新しい部分が重なって さらに新しい生活の痕跡が刻み込まれていくという〈時間の奥行き〉 - 「バランス」が大事
コストとパフォーマンス、機能性とデザイン性、開放性と気密性、個人と社会、憧れと現実…
建築の設計とは、様々な矛盾する事柄を天秤にかけ、選択と決断を繰り返して(あるいは止揚を目指して)いくプロセスそのものです。その中で最も大切なのは、バランスであると考えます。
一方的で極端な選択は、建築雑誌を賑わせる「作品」にはふさわしくとも、とりわけ住宅の設計においては、慎むべきことではないでしょうか。
天秤のどちら側にウェイトを置くかは、住み手の価値観が大きく反映します。加えて、日々の生活行為や時間の中での変化、周辺環境など、住まい手が普段意識しないささいな習慣まで、きめ細やかに考慮する必要があります。
その中で最適のバランス・ポイントを見極め、シンプルな形に結晶させること。それが住宅を設計する者の役割だと考えています。 - 「生活の個性」をつきつめる
バランスを重視することは、可も不可もない無個性の住宅をつくることとイコールではありません。同じ顔をした人がいないように、まったく同じライフスタイルや価値観をもった人は、本来いません。
流行のスタイルに流されず また「住宅とはこういうもの」という固定観念にもとらわれず、その住宅・その土地での暮らしのあり方を真摯に見つめていけば、他のどこにもない、住まい手の個性にあった住宅ができあがるはずです。それは外観やインテリアが奇抜であることとは違う、住まいの本質的な個性です。
その実現のためには、今お住まいの住宅の調査も行いますし、住宅や生活イメージの問い直しも必要となってくるでしょう。何より時間をかけたコミュニケーションが不可欠です。
言葉でいうほど簡単な作業ではありませんが、そのような家づくりのお手伝いをしたいと考えています。
事務所情報・ホームページ
- 代表者名 柳沢 究
- 住 所 愛知県名古屋市緑区ほら貝3丁目4−1F
- 営業種目 設計:建築・インテリア等の企画・設計・監修・コンサルティング
- リンク 究建築研究室